アニメ制作者 特別座談会

座談会参加者
監督/絵コンテ/撮影:山下清悟(写真中央) 
キャラクターデザイン/総作画監督:川野達朗(写真左)
作画監督/原画:刈谷仁美(写真右)
聞き手
アニメーションプロデューサー 石川 学

――この作品をお二人に依頼した経緯を教えてください。

山下
川野さんにはいつもの通りの感じで依頼しました。
原作のキャラデザインを見て、どれだけ色やデザインを整理するか、そこがポイントになると思いました。
参考として色を塗られたアニメ用設定を見た瞬間に、川野さんらしい絵になった、行けそうだなと思いました。
しかし、その頃、川野さんは劇場作品(「ペンギン・ハイウェイ」)の追い込みで、作画監督は難しそうだった。
そこで、他の会社に勤めてらしたんですが、刈谷さんに「やってみない?」と……。
刈谷
お声がけを頂いて、思い切って参加させていただきました。
山下
あのとき刈谷さんに、なんで私なんですか?って聞かれた記憶があるんですが、川野さんの絵に近いなって思っていて、できるなって。
でも最初は、デジタルで描けないから、どうするってところから始まりましたね。
刈谷
液タブにするか?板タブにするか?ってところから。
川野
結局液タブ?
刈谷
そうです。(それまで)イラストとかは、鉛筆で書いてスキャンして、板タブでデジタル彩色していたりしていたんですが。
山下
最初は紙で書いてスキャンとかしてましたもんね。
川野
絶望ですね(笑)
山下
レイアウト原図はともかく、ラフ原画とかで(スキャンを)やり始めるとこれはもう(デジタル作画の制作ラインは)なんの意味もなくなっちゃいますから(笑)
川野
夜桜の頃は、紙でチェックもやっていましたね。
(注:二人はタツノコプロ制作「夜桜四重奏・ハナノウタ」で、ともにデジタル作画で参加した。)
山下
やむを得ずでした(笑)
それ以来やっていませんね。
川野
今はデジタル作画も一般化してきましたしね。
山下
夜桜の頃より増えてきましたね。
川野
夜桜のような前例もできたし、今の若手はむしろデジタル作画で描くという方が増えていると思いますよ。
山下
上手い人も多いですよね。
川野
クリスタのような安価なソフトが一般化してきたのが大きいかなと思います。
山下
刈谷さんはこの作品でデジタルツールに触ってみて、なかなか上手く描けなかった最初の頃と、今とでは何が変わりましたか?
刈谷
今はもうすっかりデジタル作業になってますね。
イラストとかは紙で書いていますけど、アニメーションはTVPaintを使ってます。
結局、慣れでしたね。
(注:「ブレイドスマッシュ」作画監督作業もTVPaintで行った。)
山下
刈谷さんにTVPaintを教えてよかった(笑)
川野
今後はもう紙でアニメはやらないんですか?
刈谷
多分やらないと思います。
山下
なにが一番大きな要因ですか?
刈谷
やっぱりその場で再生して動きを確認(プレビュー)しながら描けるっていうのが、一番大きいですね。
山下
でも川野さんはもうあんまりプレビュー使わないんじゃないですか?
川野
使いますけど、回数は減ってきますね。
どちらかというと、(デジタル作画は)顔とかをコピペできるのがありがたい。
昔は小さいストロークごとに再生していたんですけど、だんだんもうちょっと書き進めてからでいいや、と、全体を描いて最後に(プレビューして)調整していくって感じですね。
山下
何度もプレビューしながら調整していく必要があるのって難しいカメラワークがあるときじゃないですか。キャラの大きさが変わるとか。僕は最近は、動きのラフを3Dで組むことが多いんでそういう場合は難しい部分はすでに決まっている。
なので作画ソフト上でのプレビューはそんなにしなくなった。3Dでプレビューしてるだけですけど(笑)
やっぱプレビューができるということがデジタルの本質なんでしょうね。
川野
刈谷さんと僕は、デジタル作画に対して近いルートをたどっていると思います。
違うのは、デジタルと出会ってから(自分は)過酷な現場続きだったってことかな(笑)
山下
経験値は間違いなく上がりましたけどね(笑)

――アニメ用のキャラクターデザインのポイントを教えてください。

川野
原作のキャラクターデザインはディティールが多くてアクが強い。
アニメって複数の人で動かすために、キャラクターデザインを統一しなければいけないんです。
情報量の抜き方とか、色面の感じ方とかに気をつけました。色のことは山下さんも気にしていましたね。
山下
主人公(カズマ)のこの緑の蛍光色部分、一回光をピカピカ点滅させようと思って撮影で試したんですけど(笑)
刈谷さんから光り過ぎだって言われて、結構激しく点滅していたんですけど、やめました。
川野
それは知らなかった(笑)
山下
情報量はゲームイラストからはめちゃめちゃ抜いてますよね。
主人公の頭のこれ(手裏剣)、色が他の髪の部分と比べて濃いじゃないですか。撮影しててミスに見えちゃうんですよね。それが難しかった。
川野
もっと生え際の髪の毛の色が変わったように見せても良かったんだけど、アニメ的な、強いデザインになるようにしました。
山下
良かったと思います。シルエットがすごく良かった。
山下
ライバル(ケイ)、アニメっぽいディティールに減らしたのにかっこよくて。
でも髪の毛のグラデーションが撮影で難しかったな。
鎖帷子も、黒く見せて、うまい処理だなと思いました。
川野
(鎖帷子は)描きたくないでしょ(笑)
こっちのほうがエロくていいかなと思って。
タイツっぽい雰囲気にしたほうが、色気が出るんじゃないかって思って。
山下
ヒロイン(アンジュ)の特徴は三つ編みですね。
川野
原作絵(の三つ編み)、ちょっとおかしいんですよね。
山下
(原作絵は)風でなびいているんじゃないかなと思ってましたけど(笑)
川野
そんなバカな(笑)
でも(アニメ設定のような処理にして)何も言われなかったから良かったのかなと。
山下
硬いものだというね。
川野
OPアニメ中ではなびいていたじゃないですか。
あれは良かった。
山下
仮色をデザイン時に川野さんにつけてもらったんですが、川野さんの色だなと思いました。
彩度が高くなく、明度が高い、パステル調の色で。
このヒロインの服の水色なんか好きですね。
川野
元絵から彩度は引いた感じでつけました。りょーちもさんの影響が強いかな。
(りょーちも氏は「夜桜四重奏・ハナノウタ」キャラデザイン/監督)

――初の作画監督作業について。

刈谷
最初、川野さんのデザインを見せていただいたんですけど、これ描けないなと思ったんですよ。
川野
キャラデザインとして駄目じゃん(笑)
刈谷
いやいや、自分がこの絵を(描けない)って意味です(笑)
山下
刈谷さんの絵も強いからね。
刈谷
(この仕事を受けた時点では)原画もまだまともに描いたことがない私が作画監督っていうのはどうなのかな?と思いました。

――大抜擢でしたね。

刈谷
今思えばトラウマっぽい思い出が。
川野
トラウマになるようなことあったんですか?
刈谷
もっとこう描けばよかったなー、とか。

――川野さんには総作監に入っていただきました。

刈谷
それでかなり助かりました。
川野
逆にどう思いました?
キャラデザインは僕だから、当然キャラが似てるは似てるんだけど、実は僕は、総作監に後から何かされるって仕事をあまりしたことがなくて。
(夜桜の)りょーちもさんぐらいかな。
山下
りょーちもさんは動きから直し始めたりすることもあって通常の総作監とは一線を画してますからね。
川野
自分としては、刈谷さんのプランを崩してるっていう感覚もあるわけです。
ただ、自分のキャラデザインだから、自分としての統一感というところで手は入れちゃっているけれど。
刈谷
むしろ手を入れられたことで助かりました。
川野
こういう方向性がほしいんだ、ということが分かったりとかですかね。
刈谷
そうですね。
完成画面見たときに、不安だったのは自分の絵と川野さんの絵が混じっていて、連続で見たときに違いが出ないかな、ということだったんですけど、最終的に(完成映像を)観たら大丈夫でしたね。
川野
キャラの数が多いからね。同じキャラがずっと出るわけじゃないしね。
山下
メインの3キャラは(川野さんに)合わせてもらいましたしね。
川野
メインキャラ以外は刈谷さんのアニメ用デザインだったんですけど、バランスが良かったんでしょうね。
テレビとかだと急にキャラが変わって、デザイン違うじゃん!て思う時もありますけど。

――ショートフィルムは、特に山下さんとやる時は自由度高く、ガチガチに設定を作らないでやる場合が多いんですけど、その辺りはどうでしたか?

刈谷
好きにやらせてもらえたのは良かったです。
川野
山下さん自体にビジョンがはっきりとあるから、絵描きとしては乗っかりやすいですね。
逆に、ビジョンがないのに描いてくれって言われるような時は辛いですね。

――好きに描いていいって言われたのに、リテイクされると嫌でしょうね。

川野
山下さんは逆に言わなさすぎかな(笑)
山下
人によりますけどね(笑)
川野
山下さんのいい所は、直しちゃうところですよね(笑)
山下
一回目のテイストで(方向性が)外れてたら、直しちゃいますね(笑)
川野
こっちもビジョンが伝わるし、学びになるし、ゴタゴタ揉めないです。
山下
それと、描いて頂いて何か(絵描きさんなりの)ビジョンが伝わってきたら、それを基本活かします。
どう描いたらいいか迷ってるんだろうな、っていうのは(上がってきた)絵を見て分かりますし、そういう場合は絵で指示を入れます。川野さんの仰る通り、打ち合わせで伝えきれなかったビジョンの共有の意味合いも大きいので。
ただ、原画と演出ってやっぱり戦いになりやすい部分はあって、直した直さないでこう真剣勝負みたいなね(笑)
僕は最終的に作品のクオリティが上がることが第一なので、何かするにしてもなるべく原画さんの上がりに上乗せしていく形で作業するようにはしています。そうしないと総合力が下がってしまうので。
刈谷さんの原画も、基本タイミング以外は直してないです。
刈谷
そうですね。
山下
相談しながら細かいところを直していったのはあるけど。
それはどんなベテランが相手でも、統一感を出そうとするとどうしても発生してくる調整なので。
特に(演技の)プランニングでどうこうしたってのは無かったです。
魔女のカットも良かったし。
刈谷
ちょっと動きが足されたってぐらいでした。
山下
余談ですが、最近の若手は、3コマを使いすぎるところがあって、決めカットに3コマを使うのは、あんまりよろしくないなって思っていて。
川野
ここで提示しておきましょう(笑)
山下清悟はこんなこと言ってるぞって(笑)
山下
中割が入った2コマの動きが好きというのはあるけど全原画でもアクション中に3コマを使ったりするとやっぱカクついて見えるんですよね。原画の時はそれが好きだったけど演出やるようになってからはOP系が多いということもあって2コマがベースなので。
それと中割の入れ方に関しても原画はじめたての時に中5とか中3とか漠然と聞いてたから、じゃあ3枚いれてみるか、って入れてみたら全然足りなくて、7枚ぐらい入れなきゃいけなかったみたいなことがよくあったんですが、そういうのは(今回)刈谷さんもありました。
けど、次の仕事ではしっかり雰囲気が統一されてて、中枚数ももうこなれてしまって嬉しいような悔しいような(笑)
僕は大体イメージ通りの動きが作れるようになるまで4,5年かかった気がするので。
川野さんはなぜか結構最初から完全な形でタイミングが作れてましたね
川野
昔ベテランのうまい原画さんに「川野くんの原画って、なんかベテランみたいだよね」と言われ、もう落ち着いてしまったのかって……(笑)
山下
なんなんですかね。あのそつのなさ(笑)
川野
特に何かやってきたわけじゃないんだけど。
山下
刈谷さんも今はもうそんな人になっちゃいましたけど(笑)
多分(川野さんは)自主制作時代の経験値の差で、もうそこまで行っちゃったと。
ご自分(刈谷さん)の中でどうですか?変化みたいなのはありました?
刈谷
この作品で、他の原画の方々の中割の入れ方とかを見て、そこでまた勉強になりました。
私は、アニメーターになるまでは動きとか全然興味がなかったんです。
イラストから入ったので(この作品に関わることになって)絵も動かしたことないし、さあどうしよう?と思ったぐらいで。
山下
むしろ作画監督の方ができるんじゃないか、と僕は思ってましたけど、原画の方は苦しんでるな、って感じがした時もあって、やっぱり動画やって原画やって……というのと同じで、原画やってから作監のほうがよかったのかなと、ちょっと思った時はありました。
川野
山下さんは僕の若い時にそういうことを感じてくれてないから……。
山下
川野さんは特に悩んでる様子もなかったから(笑)
川野
悩んでたんでしょうけど(笑)
山下
(参加してくれた)原画さんが多岐にわたってましたね。
関弘光さんとかは、全部原画で描いてくるし。
川野
最初からこのメンツとやれるっていうのは凄いことですよ。
山下
そうですねー。渡辺啓一朗さんとか……コンテがどこに残ってるんだ!?っていう(笑)
最初上がってきた時どのカットだ???って思いましたよ。
刈谷
思いましたねー(笑)
山下
あの自由さは参考にすべきであって。
「好きにやっていい」って言われたときの「好き」の振り幅、半端ないなって(笑)
川野
普通の現場と違いすぎるから(笑)
(刈谷さんが)アニメやった気になれるかな(笑)
山下
温泉さんの原画も全然違う方向の描き方で。
結構アクション中に中割の点がたくさん打ってあったりして。
ああいう見せ方もあるので、勉強になると思います。
小島崇史さんはさすがですね。
川野
さすがって感じですね。ちゃんとしてる人だなあって。ああ!出来るなあって。
上手い人でも絵を入れる(キャラ修正)のは必要になるんだけど、絵を入れなくてもいいって思えるのが、そもそも凄い。
山下
原作の絵なぞっただけですよ、って言ってたけど、全然リファインされて動かせる絵になってるのが素晴らしいなと思いましたね。
川野
そうですねー。
山下
まあ、刈谷さんにとって最初がこのタイトルっていうのは、漫画でよくある、死にかけるけど超強くなる修行、みたいな。
急激に成長したと思うけど、正規の道筋ではない。
川野
「祭り」がピークな現場を知っちゃってるから、他(の現場)に行ってどうなるのかな。
刈谷
いろいろ言われてるような「アニメの現場がひどい」という現場をまだ経験してないので……。
川野
(それに負けて)ダメになるような人ではないと思いますけど。
山下
またすぐにでも仕事を頼みたい(笑)
レイアウト原図が不安っていうのは多くて、そういう時に1枚描いてもらえるだけでもめちゃめちゃ助かりますからね。
特に美術設定込みの原図みたいな。
川野
世界観を表現できるようなね。
山下
そういうのが描ける人は貴重ですから。
この作品のコンテだってそうですけど、普段は描かないようなコンテを描けるわけですよ。ちょっと(カメラ)引き目で、美術を主体で見せるようなカット。普段は怖くて作れない。
でも刈谷さんがいてくれたら作れるわけで。
監督としてそういうのが頼めるスタッフがいるのは、いいなって思います。
川野さんに頼めた時も同じ気持ちですけど。

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